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国内外で年々市場が拡大するEC事業。日本のみならず、海外ユーザーに対してもビジネスチャンスが生まれる可能性がある一方、EC事業者は「集客・販売面」「物流面」の課題に直面する可能性があります。
今回は、EC事業について、事業者数や市場規模の推移、分野別の市場規模、事業を営むメリット、将来性などについて解説。EC事業者が直面する課題と、その対策についてもご紹介します。
EC事業とは
「EC(Electronic Commerce)」とは、電子商取引を意味しており、「Eコマース」とも呼ばれます。そんなECについて、経済産業省は以下のように定義しています。
【広義の電子商取引(EC)の定義】
「コンピューター・ネットワーク・システム」を介して商取引が行われ、かつその成約金額が捕捉されるもの
「平成22年度我が国情報経済社会における基盤整備」(電子商取引に関する市場調査)の結果公表について(補足資料)
つまりEC事業とは、 物やサービスをインターネット経由で取引する事業ということができます。
一般消費者におけるEC事業の身近な例としては、楽天・Amazonなどのネットショップ、チケットや航空券の予約サイト、Uber Eatsなどのテイクアウトサービスなどが挙げられます。
EC市場における事業者数
EC市場における事業者数について、現在公開されている官公庁のデータはありませんが、国内を代表するECモールの出店数は、以下のようになっています。
- Yahoo!ショッピング:約117万店舗(2021年8月時点)
- Amazon Japan:約40万3,448店舗(2021年7月時点)
- 楽天市場:約5万店舗(2021年2月時点)
1つの企業が複数のプラットフォームを利用している可能性などはあるものの、上記を見ると国内に多数のEC事業者が存在していることが分かります。
近年は、低価格・無料での出店・出品が可能な反面、競合が多いため、商品選定や運営体制を含めてしっかりと戦略を立ててEC事業をスタートすることが重要です。
EC事業の市場規模の推移
国内のEC事業の市場規模は、年々拡大傾向を示しています。
なお、EC事業のビジネスモデルには、BtoC・BtoB・CtoCなど複数の種類があり、それぞれに市場規模も異なります。
以下、ビジネスモデルごとに市場規模をチェックしていきましょう。
BtoCの市場規模
BtoC(Business to Customer)とは、物やサービスが企業から一般消費者に提供される「消費者向け取引」を意味します。
以下グラフは、BtoC-EC市場規模の経年推移です。
経済産業省|電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
BtoCの市場規模は、2013年には約11.1兆円であったのに対して、2021年には約20.6兆円と、およそ2倍もの成長を見せています。
EC化率
物販系分野のBtoC-EC市場規模
- 令和3年は消費者の間で徐々に外出機会が回復したにも関わらず、物販系分野のBtoC-EC市場規模が引き続き増加
- 今後物価上昇による消費減退が懸念されるものの、EC利用が様々な商品カテゴリで定着してきており、市場成長率としては高いものと評価
経済産業省|電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
なお、物販系分野のEC化率(商取引においてECが市場規模に占める割合)を見ても、2019年に6.76%、2020年に8.08%、2021年に8.78%となっています。
コロナ禍を契機にEC化率が急上昇し、外出機会が徐々に回復した2021年も、EC化率の上昇が続いていることが分かります。
【分野別】BtoCの市場規模
BtoC-ECの市場規模及び各分野の伸長率
2019年 | 2020年 | 伸長率 | |
---|---|---|---|
A.物販系分野 | 10兆515億円 EC化率 6.76% | 12兆2,333億円 EC化率 8.08% | 21.71% |
B.サービス系分野 | 7兆1,672億円 | 4兆5,832億円 | ▲ 36.05% |
C.デジタル系分野 | 2兆1,422億円 | 2兆4,614億円 | 14.90% |
総計 | 19兆6,609億円 | 19兆2,779億円 | ▲ 0.43% |
経済産業省|電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
BtoC-EC市場規模の経年推移を分野別に見ると、物販系分野は、2020年には新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛の影響(いわゆる巣ごもり需要)で、大幅な規模拡大を見せています。
また、2020年にサービス分野の縮小が見られます。主な理由としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による、旅行サービスの縮小などが考えられます。
デジタル分野については、堅調に市場規模を拡大しているということができるでしょう。
BtoBの市場規模
経済産業省|令和3年度 電子商取引に関する市場調査
BtoB(Business to Business)とは、物やサービスを企業から企業へ提供する「企業間取引」を意味します。
上記グラフをみると、国内の日本国内BtoB-EC市場規模は、2019年に353兆円、2020年に334.9兆円、2021年に372.7兆円となっています。
2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で市場縮小に転じたものの、2021年には回復し、前年比で11%超の拡大を示しました。
CtoCの市場規模
CtoC-EC市場規模
2019年 | 2020年 | 伸長率 | |
---|---|---|---|
CtoC-EC | 1兆9,586億円 | 2兆2,121億円 | 12.9% |
経済産業省|令和3年度 電子商取引に関する市場調査
CtoC(Consumer to Consumer)とは、物やサービスを一般消費者から一般消費者へ提供する「個人間取引」を意味します。
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」によれば、国内の日本国内CtoC-EC市場規模は2019年に1兆7407億円、2020年に1兆9586億円、2021年に2兆2121億円となっています。
近年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、 ホビー・エンタメ関連のニーズが増えたことも、CtoC-EC市場の急速な規模拡大につながったと考えられます。
ECの種類
ECタイプ別分類 (BtoC) |
事業概要 | 物流の特徴 |
---|---|---|
小売型 | 自社で商品を調達し、 ネットで販売 |
|
モール型 | 仮想モールに多数の店舗を出店 |
|
オークション型 | オークションサイトを運営 | |
総合通販型 | カタログ販売から通販事業をスタートし、ネット通販の割合を高める | |
ネットスーパー | 生協や会員制の食材宅配も含めたスーパーによるネット販売 |
|
中小ネット通販 | モール型の大手通販サイトに出店、 もしくは自社サイト運営 |
|
モール型EC | ストアフロント型EC | ||
---|---|---|---|
プラットフォーム の特徴 |
機能 | 画一的 | 拡張性が高い |
デザイン | 商品は画一的なデザインで他者と並んで陳列 | ショップやブランドの魅力を自由に表現 | |
ショップの特徴 | 商品 | 広く知られたブランドやコモディティ化された汎用品 | ユニークで他店にないオリジナル商品 |
集客 | プラットフォームが集約的にマーケティングし、ショップの代わりに集客 | ショップがSNS等により直接集客 | |
購入者の特徴 | デザイン | 品揃えやコスパ等の利便性 | ブランドのファンとしての体験や交流 |
ECの種類は、「モール型」と「ストアフロント型(独立型)」に大別できます。
モール型は、同じサイト内に複数の店舗・商品が存在するECサービスです。具体的に、同じサイト内に複数の店舗を出店し、店舗ごとの独自性が出せる「テナント型モール」と、
サイト内で各企業が出店はせず、商品のみを出品する「マーケットプレイス型モール」があります。
他に「統合管理型モール」もありますが、こちらは基本的に、モールの運営企業と出店企業が同じです。
ストアフロント型は、各企業が独自のECサイトを構築するためのサービスで「独立型」「自社サイト型」とも呼ばれます。構築の自由度が高く、各企業の独自性を打ち出すことができる反面、ある程度の集客力が期待できるモール型とは異なり、ゼロから認知度を高めて集客する必要があります。
EC事業を展開するメリット
EC事業をスタートすると、事業者は以下のようなメリットを享受することができます。
- ランニングコストが削減できる
- 時間や場所にとらわれずに販売できる
- リピート購入・定期購入がしやすくなる
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
ランニングコストが削減できる
EC事業は、実店舗が小さい、もしくは実店舗がなくても物やサービスを販売することができます。また、売上拡大に際しても支店などを増やす必要がありません。
これにより、実店舗を運営する際に発生する家賃や、水道光熱費などのランニングコストを抑えることが期待できます。
時間や場所にとらわれずに販売できる
EC事業では、物やサービスをインターネット経由で販売します。そのため、事業者は実店舗のように場所に制約されず、世界中のユーザーと取引することが可能です。
また、EC事業であれば時間の制約もなく、24時間注文を受けることができます。そのため、営業時間の限られた実店舗のように、販売機会を逃すことがありません。
リピート購入・定期購入がしやすくなる
EC事業をスタートすると、インターネット経由で購入できるため、ユーザーにとっても利便性が高くなります。実際に店舗まで出向く必要がないことから、気軽に購入できるようになり、リピート購入・定期購入へつなげることが期待できます。
近年では、リピート・定期販売機能のついたECプラットフォームやECカートシステムも登場しているため、より販売機会の拡大につなげやすいでしょう。
EC事業のトレンド
2023年のEC事業のトレンドになりそうなものに、「越境EC」があります。越境ECとは、インターネットを活用して、日本国内から海外へ向けて、多言語多通貨に対応した販売をするECのことを指します。
「各国における越境ECの状況」(日本政策金融公庫)によれば、世界のEC市場規模は年々拡大を続けています。2023年には前年比10.4%程度の成長が見込まれており、日本も各国との取引がさらに活発化することが予想されます。
また、「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(経済産業省)では「DtoC(Direct to
Consumer=企業が自社商品をECサイト上で消費者へ直接販売する取引)」について、「各販売チャネルの位置付けを明確にし、メリハリのある販売戦略に取り組むなどすることで、DtoCの市場規模が今後拡大する」といった旨の予想を紹介しており、今後の動向が注目されます。
越境 ec とは
2023年のEC事業のトレンドになりそうなものに、「越境EC」があります。越境ECとは、インターネットを活用して、日本国内から海外へ向けて...EC事業の将来性
EC事業は国内外において、市場が拡大していくと予想されています。
「ITナビゲーター2021年版」(野村総合研究所)では、国内のBtoC-EC市場について年々拡大すると予測しており、2026年にはおよそ29.4兆円に達するとの見解を示しています。
また、「各国における越境ECの状況」(日本政策金融公庫)では、2022年以降、世界のEC市場規模が年8〜10%程度拡大すると推計しており、2026年にはおよそ1,146兆円(8兆アメリカドル)に達するとの予測を紹介しています。
このような市場拡大によって、国内のみならず海外への販売機会が広がる可能性も考えられるため、EC事業の将来性は高いということができるでしょう。
EC事業者が直面する課題
EC事業者が直面する課題は、以下の2つに大別できます。
- 集客・販売面における課題
- 物流における課題
ここからは、それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。
集客・販売面における課題
EC事業は、販売する物・サービスがあればすぐにスタートすることができる反面、集客が大きな課題となるケースが少なくありません。
現在、多くの企業がEC事業に乗り出しているため、その中から自社サイトにアクセスしてもらうことは容易ではありません。また、アクセス数が増えても購入につながらない場合や、リピーターやファンが獲得できない可能性も考えられます。
この他、自社のネットショップではなく商品を出品するECモールでは、比較的アクセスはされやすい一方、同一商品を出品する他社と価格競争をする必要が生じます。
さらに、EC事業の運営に際しては自社サイトのセキュリティ対策ほか、個人情報の取り扱いにも万全の注意を払わなくてはなりません。
集客・販売面における課題に対しては、EC事業・Webマーケティングに強い企業のサポートを受けることを検討すると良いでしょう。
物流における課題
EC事業で、集客・販売面以外で大きな課題となりうるのが「物流」です。
具体的には、受注から発送までをスムーズに実施することが求められますが、システムや体制が整っていないと、商品発送が遅れたり、誤発送の恐れも生じます。
また、在庫管理がきちんとできていないと、賞味期限が切れていたり、同梱物を忘れたりといってたトラブルにつながります。とくに、複数のECサイトを展開する場合には、ミスが発生する可能性も高まるでしょう。
物流における課題に対しては、受注システムや倉庫管理システムの導入・構築を検討すると良いでしょう。
EC事業者が物流面の課題を解決するには
EC事業者の物流面の課題は、「物流の効率化」「物流のアウトソース」などで解決が期待できます。
例えば、「ゆうパック」などの配送サービスを手がける日本郵便では、以下のような物流ソリューションサービスをEC事業者向けに提供することが可能です。
- アウトソーシング
- クラウド型倉庫管理システムの構築
- 受注システムの構築
必要な期間・必要な物流作業の委託を、小ロットから受け付けます。
在庫管理・消費期限管理・同梱物制御などの機能を備えます。
ECサイトが複数ある場合も受注の一元管理ができます。
これらの導入/運用には全国にある日本郵便の物流センター担当者がしっかりサポートいたします。
EC事業への参入を検討しているが、EC事業に関するノウハウがないとお悩みの方は、ぜひ一度日本郵便にご相談ください。
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ご利用申込・お問い合わせまとめ
EC事業とは、電子商取引を意味し、日本を含む世界の市場規模は年々拡大しています。
EC事業は、インターネット上で商品・サービスを販売するため、時間や場所にとらわれず販売できるほか、ユーザーがリピート購入・定期購入しやすくなる点もメリットです。さらに、実店舗運営と比較して、ランニングコストの削減も期待できます。
近年は安価もしくは無料でEC事業をスタートすることも可能ですが、EC事業者は「集客・販売面」「物流面」の課題に直面する可能性があります。
そこで、集客・販売面の課題解決に注力できるよう、物流の課題については効率化やアウトソースを実施すると良いでしょう。
日本郵便は、EC事業の効率化・アウトソース、必要なシステムの構築、さらに越境EC・海外配送など、EC事業者の物流業務を支援しています。
長い歴史の中で培ったノウハウとネットワークを活用し、さまざまな物流課題を解決する「ワンストップ物流ソリューション」を提供しておりますので、ぜひEC事業の運営・拡大にご活用ください。