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世界的にインターネットインフラが整ってきた昨今、取り扱う商品によっては国内のみならず海外にもEC展開しようと考えている人もいるのではないでしょうか。実は今、海外にEC展開する「越境EC」が増加しています。
そこで今回は、越境ECの市場規模やメリット・デメリット、ビジネスモデルについて解説します。
越境ECとは
越境(えっきょう)ECとは、国境を越えて行う電子商取引(E-Commerce)のことをいいます。
具体的には、海外のECサイトに出品されている商品を購入して日本に取り寄せたり、逆に日本のECサイトで海外向けに商品を販売したりすることを指します。
国内EC及び越境ECの市場規模
経済産業省|「令和4年度(2022年)電子商取引に関する市場調査 報告書」
まず、国内のEC市場から見ていきましょう。経済産業省によると、2022年の国内EC市場は約22.7兆円です。2020年だけ新型コロナウイルスの影響で若干の減少が見られますが、2013年から着実に成長を遂げています。
一方、越境ECにおいては、その成長率は国内市場の比ではありません。
経済産業省|「令和4年(2022年)度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
2021 年の世界の越境 EC 市場規模は7,850 億 US ドルと推計され、その値は 2030 年には 7 兆 9,380 億 US ドルにまで拡大すると予測されています。(年平均成長率は約 26.2%と推計)
近年の「フルホスティングモデル」(Full Hosting Model、全託管服務)と呼ばれる新たなビジネスモデルの登場により、より一層越境 EC の市場規模は拡大し続けていくことでしょう。
越境ECが増加する背景
越境ECが増加する背景には、次のような要因が考えられます。
- インターネットインフラの普及
- インバウンド観光客のリピート需要
- 国内消費人口の減少による海外展開
- 海外展開におけるコスト低減
世界的にインターネットインフラが整備され、シームレスに繋がれるようになったことが越境EC普及の第一の理由として挙げられます。インフラが整備されたことにより、インバウンド観光客が訪日後に気に入った商品を自国でリピート購入できるようになりました。
これにより、海外からの購入者が増加しています。一方で、日本国内では少子高齢化や人口の減少の影響により消費人口も減少が見込まれます。
国内EC市場は拡大しているとはいえ、消費人口は減少傾向にあるため、海外に販路を広げようと検討する企業が増えているのです。 また、海外展開する際に現地に実店舗を構える必要がなく、コストを低減できる点も越境ECが増加している理由として考えられます。
越境ECのメリット
越境ECに挑戦するメリットは次のとおりです。
- 商圏拡大による売上増が見込める
- 「日本ブランド」による付加価値が付けられる
- 輸出取引の免税によるコスト削減
越境ECに挑戦すれば、商圏を広げられることになります。商圏が広がるだけで売上が増えるわけではありませんが、リーチできる消費者の数が増えれば売上増の期待値は自ずと高まります。
国内では当たり前の「日本ブランド」も越境ECにおいては追い風になってくれます。いわゆる「爆買い」に象徴されるように、海外では「日本製品=質が高い」ことで知られています。
世界的に物価高となっている昨今、国内でも物価の価格は高騰していますが、諸外国には及びません。つまり、本来高価であった日本製品が安く買えるチャンスを迎えているのです。日本ブランドに憧れを持つ外国人も一定数いるため、この層にリーチできれば国内よりも高価格帯での取引も期待できるでしょう。
また、最大のメリットとして挙げられるのが輸出取引の免税によるコスト削減です。国内取引には消費税が課税されますが、国外の取引においては消費税が免除されます。さらに国外取引にかかった諸費用は確定申告により免税が受けられるため、実質的なコスト削減が見込めます。
越境ECのデメリット
商圏拡大や輸出取引の免税により売上の拡大が期待できる一方で、越境ECには次のようなデメリットも存在します。
- (国内と比較して)輸送コストが高い
- 越境ECを展開する国の言語対応が必要になる
- 代金未回収・返品未回収のリスクがある
現地に倉庫がある場合を除き、越境ECでは日本国内から商品を発送することになるので、国内ECよりも輸送コストが高くなります。輸送方法によってもかかるコストは変動するので、低コストで輸送できる方法を調べておきましょう。
また、ECサイトの表示やサポートセンターなど、現地の言語に合わせる必要があるのもデメリットといえます。販売国の言語にしっかり翻訳できていないと商品の魅力が伝わらないどころか、問い合わせやクレームにつながる可能性も否めません。それにより、業務負荷が高まるおそれがあるため、販売国の言語に対応できる人材を確保しておくようにしましょう。
意思疎通が上手くいかないことによって、返品対応においても商品が返送されてこないリスクがあります。また、海外クレジットカードの不正利用やWeb決済が普及していないなど、代金が回収できないケースが出てくることも考えられます。そのため、セキュリティ対策や決済方法など、対象国ごとに最適な対策を練る必要があります。
越境ECの6つのビジネスモデル
越境 EC のビジネスモデルは年々多様化していますが、主に6つの形態に分けられます。
- 国内自社サイト
- 国内ECモール等出店(出品)
- 相手国ECモール等出店(出品)
- 保税区活用型出店 (出品)
- 一般貿易型 EC 販売
- 相手国自社サイト
経済産業省|「令和4年(2022年)度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
それぞれの形態について、解説します。
国内自社サイト
日本国内に越境ECの自社サイトを構え、もともと日本語で提供している自社ECサイトを多言語化することで、越境ECに対応するケースです。配送は、EMSやUGXなどの国際配送サービスを活用し、購入者へ直送します。
物量が多い場合や自社での海外発送ノウハウがない場合は、国内にある越境ECに長けた発送代行会社に配送や関税の対応を委託する場合も増えています。
国内ECモール等出店(出品)
日本国内で越境ECに対応したモール等へ出店(出品)し、国内消費者を対象とした出店(出品)の延長線として海外の消費者に向けて販売。
配送は、自社サイトを多言語化した場合と同じく、EMSやUGXなどの国際配送サービスを活用し、購入者へ直送するか、物量が多い場合や自社での海外発送ノウハウがない場合は、国内にある越境ECに長けた発送代行会社に配送や関税の対応を委託する場合も増えています。
相手国ECモール等出店(出品)
相手国のECモールやECサイトに出店(出品)するビジネスモデルで、出店(出品)に際しては、ECモール、ECサイト運営事業との交渉が発生するため、日本法人がある場合は日本法人経由や専用の代行会社によるサポートを依頼するケースがあります。
配送は、直送の場合もありますが、大手のECモールでは、配送期間を短くするため、相手国にある倉庫に事前納品し、注文が入った場合、現地の配送業者が配送することが一般的です。
保税区活用型出店 (出品)
中国向け越境ECでよく活用されている方法で、保税区に指定された域内の倉庫に予め商品を輸送しておき、受注後保税倉庫から配送するビジネスモデルです。
配送は、注文後相手国からの発送であるため、直送と比較し配送期間が短くて済むメリットがあります。
一般貿易型 EC 販売
一般的なBtoBの販売チャネルとしてECを活用する際に、一般貿易同様に、国内の輸出者と相手国側の輸入者との間で貿易手続きを行い、相手国側のECモールやECサイトで商品を販売するビジネスモデルです。
相手国自社サイト
相手国側で自社サイトを構築するビジネスモデルです。既に相手国において自社商品が浸透し、かつECサイトの運営を自社でコントロールできる体制を整えている場合となるため、これから始める方にはハードルが高い方法となります。
まとめ
日本の越境EC市場は、EC市場規模の大きい中国やアメリカなどに比べるとまだまだ発展途上です。つまり、今はまだブルーオーシャンともいえる時期。早めに越境ECに乗り出せば、先駆者的ポジションを築きやすいでしょう。
そのためには商品の仕入れや検品などはもちろん、発送面も力を入れていかなければいけません。特に海外への物流は通関などさまざまな障壁があるため、これらの課題をクリアして迅速かつ安全に商品を届けることが求められます。
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なお、以下の記事では、越境ECの始めるまでの準備や出店方法、注意点について解説していますので、ぜひ参考にしてください。
越境ECを始めるまでの準備や出店方法、注意点について解説