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世界的にインターネットインフラが整ってきた昨今、取り扱う商品によっては国内のみならず海外にもEC展開しようと考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、越境ECの始め方について解説します。注意点にも触れているので、本記事で越境ECについて一緒に勉強していきましょう。
越境ECとは
越境(えっきょう)ECとは、国境を越えて行う電子商取引(E-Commerce)のことをいいます。
具体的には、海外のECサイトに出品されている商品を購入して日本に取り寄せたり、逆に日本のECサイトで海外向けに商品を販売したりすることを指します。
なお、以下の記事では、越境ECの市場規模や拡大の背景、6つのビジネスモデル、始めるメリット・デメリットなどを解説しています。
越境ECとは?越境ECの市場規模やメリット・デメリット、6つのビジネスモデルを解説
越境ECを始めるまでの流れ
越境ECを始めるまでの流れは、次のとおりです。
- 商品の準備
- 販売する国とターゲットの設定
- 出店方法を決める
インターネットインフラが整備されている国であれば基本的に越境ECを展開できますが、国によって売れる商品が異なります。そのため、商品準備段階で、販売する国を入念にリサーチしておく必要があります。
商品の準備
日本製の商品は品質が良く安全性が高いとして海外でも人気がありますが、「出品すれば何でも売れる」わけではありません。国によって需要も違えば、商品に対する法的な扱いも異なります。そのため、販売する国のことを事前にリサーチしたうえで、売れる商品を選定しなければいけません。
販売する国とターゲットの設定
商品選定のためのリサーチである程度、販売国とターゲット層は絞れてくるでしょう。そこからさらに細かくターゲット層を設定し、購買プロセスを予想していきます。ちなみに、国別EC市場のシェアは次のようになっています。
経済産業省 「令和4年(2022年)度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
リサーチによりターゲット層を見極めてマーケティングを行えば、どの市場でも一定の売上を上げられるでしょう。
出店方法を決める
商品と販売国、ターゲット層が定まったら、最後にどのプラットフォームに出店するかを決めます。各国でよく使用されるプラットフォームが日本と異なることが多いうえ、更にターゲットによって好みが分かれることも多いので、よくリサーチしておくようにしましょう。詳しい出店方法については次章で解説します。
越境ECサイトの出店方法
購入者が個人の場合、越境ECの出店方法は大きくわけて4種類あります。
メリット | デメリット | |
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海外のプラットフォームに出店する |
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海外対応の国内プラットフォームに出店する |
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現地法人を開設して出店する |
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自社で越境ECサイトを構築・運営する |
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手軽なのは、AmazonやeBayなどの海外のプラットフォーム、または楽天市場といった海外対応の国内プラットフォームに出店する方法です。手数料が発生する点などはデメリットですが、出店までのスピードが速く、需要があるかどうかの見極めが可能。本格的に出店する前段階でPDCAを回せるので、最小限のリスクで越境EC進出が可能です。
海外のプラットフォームに出店する
もっとも手軽に越境ECをはじめられるのが、AmazonやeBayなどの海外拠点のECモールに出店する方法です。海外ECモールにはその国の多くの消費者が集まるため、認知度向上による集客力が期待できます。また、運営サポートを提供しているケースが多々あるので、運営ノウハウがなくても出店可能。越境EC初心者に特におすすめの方法です。
一方で、出店費用や販売手数料などのランニングコストが発生する点はデメリットといえます。また、多くの店舗が出店しており、類似品が出品されているケースもあるため価格競争が起きやすく、ともすれば国内ECよりも売上が上がらないリスクもあるでしょう。さらに、ECモールでは決まった様式で商品ページを作成するため、ブランディングがしづらい点も考慮してマーケティング戦略を立てなければいけません。
海外対応の国内プラットフォームに出店する
自社が越境ECで売上を立てられるか、可能性を探りたい場合は海外への販売・発送に対応している楽天市場などの国内ECモールへの出店がおすすめです。海外プラットフォームと同じく運営サポートがあるため、出店のハードルが低い傾向にあります。
しかし、海外の消費者からの認知度は低いため、肝心の集客力は期待できません。また、出店費用や販売手数料がかかってくるうえに、様式が統一されているため、他店との差別化が図りにくいデメリットがあります。
現地法人を開設して出店する
本格的に対象国でのEC市場参入を考えているのであれば、現地法人を開設して出店する方法があります。現地の人から見れば自国のECサイトになるため安心感を持ってもらえやすくなり、売上アップに期待が持てます。また、現地に倉庫を持てば輸送コストを抑えられる点もメリットといえます。
その一方で、法人登記や物流の整備など初期コストが大きくなります。また、手続きにも時間がかかるため、スピーディーな展開は望めません。
自社で越境ECサイトを構築・運営する
自社で対象国向けのECサイトを構築・運営すれば、出店費用などの手数料は発生しません。また、デザインや階層など、サイトを自由に構築できるためブランディングのしやすさはプラットフォームを活用する際に比べると格段に上がります。さらに顧客のデータ収集・分析ができるので、IT・マーケティングの知識がある人材が社内にいる場合は、越境ECでの売上拡大にも期待が持てます。
デメリットとしては、サイトの構築・運営、メンテナンスなど、すべて自社で対応しなければいけないため、リソースの確保が必要となる点が挙げられます。外注するにしてもコストが発生するため、ある程度の規模感と資金がある企業でないと取れない方法です。
越境ECを始める前に知っておきたい注意点
越境ECを始める前に、以下の注意点について把握しておきましょう。
- 出品する商品は越境ECに向いているのか確認する
- 販売先の国によって法律や規制が異なる
- 為替の変動によって売上が左右される
- 物流面の対策を行う必要がある
販売する国によって商品の需要や法的な取扱いが異なるため、国内ECと同じように考えてしまっていては失敗する可能性が高くなります。また、物流面においてもその国の事情を踏まえた対策を取らなければいけません。
出品する商品は越境ECに向いているのか確認する
出品商品が対象国のターゲットのニーズに合っているかどうかはもちろん大切ですが、それと同時に対象国で輸入規制や輸送不可対象になっていないか、関税は高くないかも確認しておきましょう。輸入規制や輸送不可の商品を仕入れてしまうと、在庫を抱えることになり損失が大きくなります。
また、輸入品に課される関税は商品によって割合が異なります。国によって異なりますが、関税は現地の購入者が負担する場合も多くあります。その場合、複雑な計算が必要となり、想定よりもコストが高くなることでトラブルに発展することも考えられるでしょう。そのため、関税などの諸費用の計算方法についてサイト上に記載するなど対策を取っておく必要があります。
海外で販売する商品は日本で売れなくなった商品でも販売できることがあります。
例えば、販売する国が南半球の国だった場合は、日本と季節が逆になります。
日本で季節変化により販売期間が経過した商品でも、海外ではこれから売れる商品になり得ることがあり、季節のギャップを利用して仕入れを行うことにより大きな利益を得ることも可能です。
販売先の国によって法律や規制が異なる
国が違えば、その国の法律の内容も違ってきます。日本と同じ感覚で商品を売ってしまうと現地の法律に触れてしまうおそれがある点には注意が必要です。法律に抵触してしまうと、罰則によりECサイトの運営に支障がでてくるため、販売国を決めたらその国の法律について入念に調査しておくことをおすすめします。
特に人体に入れるもの、触れるもの(食品や化粧品、食器類など)は厳しい規制があることが多く、事前に規制等を調査しておかないと販売国へ送ることすらできなくなる恐れがあります。
また、自社で生産・販売した商品に不具合が生じた場合に国によっては訴訟問題になるリスクがありますが、PL保険などを活用することでリスクを減らすこともできますので、事前に調査しておくことが重要になります。
為替の変動によって売上が左右される
現地通貨で価格を設定すると、為替の変動によって売上が左右されることになります。たとえば、現地通貨がドルの場合、円安になれば売上が上がりますが、円高になると売上は下降します。
これを避けるため、日本円で代金を表示・決済する方法もありますが、これは現実的ではありません。なぜなら販売国の消費者が日本円での表示・決済を受け入れてくれるとは限らないからです。外国通貨での表示は敬遠されるリスクが高く、これだけの理由ですが購入率が下がり、売上低迷も考えられます。
また為替の変動リスクを低減させるには売上金をドルやユーロなど貿易で一般的に使用される通貨にするとともに、販売品を海外から仕入れる際に外貨建てで購入することにより日本円の変動に左右されにくくなります。
そのため、メリット・デメリットを把握したうえで、適用する通貨を決めるようにしましょう。
物流面の対策を行う必要がある
海外への発送は国内発送よりも輸送時間が長くなるため、破損や紛失、遅延といった物流トラブルのリスクが高まります。また、国内発送に比べて商品の受け取りまでの時間が掛かるほか、現地で在庫を管理している場合は在庫切れのリスクも考えられます。
国内と同様、海外でも口コミの力は強く、消費者の購入意思に関係してくるので、こうしたトラブルはできるだけ避けるのがベターです。そのため、破損や紛失、在庫切れといったトラブルが起きにくい物流環境を整えておく必要があります。
越境ECにおける物流の重要性
越境ECにおいて物流は、売上に直結するポイントの一つです。なぜなら購入者の手元に届いてこそ売上になるからです。それもただ届くだけではいけません。破損や遅延はNG。安全かつスピーディーに届ける必要があるのです。
先にも記載していますが、口コミは購入の意思決定に大きな影響を及ぼします。輸送時にトラブルが起きた際に、対応が遅れると低評価の口コミが付く可能性が高まるため、迅速に対処できるように輸送の流れを把握しておかなくてはいけません。
また、海外への発送においては通関に必要な書類の作成が発生します。正確に書類を作成できなければ、輸出はできないため、商品の到着も遅れることになります。スムーズに対応できずに到着が遅れた場合、リピートがなくなるだけでなく、悪い口コミを記載されることもあるでしょう。
特に、越境ECに慣れていない事業者においては、輸送時のトラブルや複雑な通関の手続きは大きな負担となります。そのため、こうした物流課題の解決には海外配送のプロに委託するのがおすすめです。
日本郵便では、国内だけでなく海外への配送にも対応。予算や荷物のサイズなど、海外発送における物流課題に応じたソリューションを提供しています。全国2万2,000か所以上の拠点で持ち込み可能。差出個数に応じた割引サービスもあるので、物流コストも抑えられます。
また、国際物流専門のグループ会社により国際物流を一括で請け負うこともできるので、越境ECを始めるにあたって物流コストを抑えたい、物流の不安を取り除きたい場合はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
日本の越境EC市場は、EC市場規模の大きい中国やアメリカなどに比べるとまだまだ発展途上です。つまり、今はまだブルーオーシャンともいえる時期。早めに越境ECに乗り出せば、先駆者的ポジションを築きやすいでしょう。
そのためには商品の仕入れや検品などはもちろん、発送面も力を入れていかなければいけません。特に海外への物流は通関などさまざまな障壁があるため、これらの課題をクリアして迅速かつ安全に商品を届けることが求められます。
世界各国・地域の郵便事業体とともに強固なネットワークインフラを構築してきた日本郵便であれば、安全面、スピード面はもちろん、コスト面でもより良い提案が可能です。集荷も利用できるため、発送における面倒ごとを軽減できます。コア業務に集中できる環境を整えることにより、売上を伸ばすお手伝いをしておりますので、物流に関して不安がある場合はぜひお気軽にご相談ください。
また、日本郵便では輸入にも対応。商品を海外から取り寄せ、国内外に販売する場合においてもお力になれます。