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スマートフォンの普及などにより急速に拡大している越境ECの市場規模。これからさらに急激な成長をすると予測されています。
この記事では、現状の市場規模と将来性、またその成長の背景から越境ECを成功させるためのポイントなどについて紹介します。国内だけでなく海外を視野に入れた事業展開を予定している方や、現在事業展開をしているものの苦戦している方は、参考にしてみてください。
越境ECの市場規模と将来性
越境ECとは、インタ−ネットを通じて商品やサービスを海外に販売することを指します。越境とは国境を越えることを意味し、ECは電子商取引を表す「E-Commerce」を意味します。越境ECは大幅な拡大が予測されています。以降で詳しくみていきましょう。
世界の越境ECの市場規模と将来性
経済産業省| 令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書
経済産業省の「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、2021年は7,850億USドルだった越境ECの市場規模が、2030年には7兆9,380億USドルにまで、年間平均成長率でいうと約26.2%と推計され、今後も市場が拡大し続けることが予測されています。
また、同資料からは、世界のECの市場の現状も読み取れます。2022年度の国別のBtoC EC市場シェアランキングのトップ5は下記の通りです。過半数以上のシェアで中国が1位となっています。
- 1位…中国(50.4%)
- 2位…アメリカ(18.4%)
- 3位…イギリス(4.5%)
- 4位…日本(3.1%)
- 5位…韓国(2.5%)
この現状から、EC事業者は市場規模の大きな国に越境EC事業を展開すると、より利益を拡大できる可能性が高いと言えます。
日本の越境ECの市場規模と将来性
経済産業省| 令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書
次に、日本の越境ECの市場規模(対中国、対アメリカ)をみていきましょう。こちらも経済産業省の報告書によると、中国の消費者が越境ECを利用して日本から2兆2,569億円購入し、アメリカから1兆3,056億円購入していることがわかります。
一方、日本の消費者が越境ECを利用して中国から購入した額は392億円、アメリカから購入した額は3,561億円となっています。
これらのデータから、日本は越境EC市場において、中国・アメリカの消費者が日本で購入した購入額が多いのに対し、日本の消費者が中国・アメリカで購入した購入額は低いことがわかります。
そのため、日本における越境EC市場は、まだまだ成長の余地があると推測されます。
越境ECにチャレンジすべき理由
今後も市場拡大が予測される越境ECにチャレンジすべき理由を、以下3つの視点から見ていきましょう。
- 訪日外国人によるリピート購入の需要が見込めるから
- 国内消費の減少が予測されているから
- 「日本ブランド」の評価が高いから
訪日外国人によるリピート購入の需要が見込めるから
まず、越境ECにチャレンジすべき理由として、訪日外国人によるリピート購入の需要が見込めることが挙げられます。
下記のグラフは、観光庁が発表した訪日外国人の推移です。2011年以降2020年〜2022年のコロナ禍に入るまで、右肩上がりに外国人旅行者数が増加していることがわかります。そして、2023年には2,507万人と、コロナ禍前の約8割程度まで回復しています。
観光庁| 訪日外国人旅行者数・出国日本人数
日本を訪問した外国人が実店舗を訪れた際に、そこでECサイトがあることを紹介し、帰国後も購入ができることを宣伝すれば、リピート購入が期待できます。また、その外国人が商品の良さを広めてくれれば、さらに売り上げの拡大が見込めるでしょう。「訪日外国人が増える=顧客の母数が増える」ことで、越境ECによる販売は、拡大していく可能性を秘めているのです。
国内消費の減少が予測されているから
越境ECにチャレンジすべき理由として、国内消費の減少が予測されていることも挙げられます。なぜ国内消費が減少すると予測されているのか、それは少子高齢化問題と結びついています。
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人に減少するといわれています。生産年齢人口が減少するということは、労働者不足、経済規模の縮小など、さまざまな社会問題が深刻化することにつながります。国内消費に頼らず、越境ECにチャレンジし、市場を海外に広げることが、これからの企業成長のひとつのプランとなるでしょう。
総務省| 生産年齢人口の減少
「日本ブランド」の評価が高いから
また「日本ブランド」の評価が高いことも、越境ECにチャレンジする理由のひとつです。日本ブランドは世界から信頼されており、「MADE IN JAPAN」として有名で、高品質で高い耐久性を持っていることが人気の秘訣です。
越境ECを成功させるためのポイント
続いて、越境ECを成功させるためのポイントについて紹介します。EC市場が盛り上がっているからといって、闇雲に海外を視野に入れればよいというものではありません。主に以下3つのポイントを理解して、越境EC市場への参入を成功させましょう。
- 消費ニーズをつかむために事前調査を行う
- 多言語対応でユーザビリティを高める
- スムーズな配送ができる物流体制を整える
消費ニーズをつかむために事前調査を行う
まずは消費ニーズをつかむために事前調査を行うことが大切です。自社の商品と相性のよい国はどこか、その市場規模はどの程度か、法規制にはどのようなものがあるか、プラットフォームは何が好まれるか、決済方法の種類などを調査しましょう。
たとえば、中国とアメリカでよく使われているプラットフォームと決済方法は以下のとおりです。
- プラットフォーム:アリババ(Alibaba)、京東(JD.com)
- 決済方法:アリペイ(ALIPAY)
- プラットフォーム:Amazon、Walmart
- 決済方法:クレジットカード、PayPal
◼︎ 中国
◼︎ アメリカ
多言語対応でユーザビリティを高める
多言語対応でユーザビリティを高めることも重要です。いくら質のよい商品でも、商品説明や口コミが日本語でしか表示されないと、詳細がわからず購入を諦めてしまう可能性があります。
安心して購入できるように、商品説明の多言語化対応を行いましょう。
スムーズな配送ができる物流体制を整える
国内外問わず求められるニーズですが、スムーズな配送ができる物流体制を整えることも、越境ECを成功させるポイントです。品質を担保した配送は大前提であり、スムーズな配送かどうかが顧客満足度に大きく関わります。
また、トラッキングシステムの導入など、透明性の高い配送プロセスを提供することで、顧客の安心感を高め、ブランドへの信頼を構築できます。これは、競争の激しい越境EC市場において重要な差別化要因となるでしょう。
日本郵便とそのグループ会社は海外配送・越境ECにも対応可能
日本郵便とそのグループ会社では、海外配送・越境ECの対応も可能です。「海外に速く・安く届けたい」「配送・倉庫業務のトータルコストを削減したい」「国際物流を一括でお願いしたい」など、あらゆるニーズにお応えする商品を用意しています。
ラインナップの主な内容は以下の通りです。
- UGX…迅速・確実な国際宅配便として世界の主要都市に展開し、集荷・配達を取り扱う全国の郵便局で差出が可能なサービス。「複数個口扱い可能」「燃油サーチャージ不要」によりコストダウンを実現。
- EMS…アジアなら2~6日でお届け。1個から集荷可能で、全世界120以上の国・地域へ発送するサービス。万が一の損害賠償制度もついている。
- クールEMS…保冷が必要な荷物を低温のまま海外へ配送が可能。
UGXでは、Amazonなどの海外モール出店における発送のサポートもあり、安心して越境ECに参入することができます。EMSでは、同時差し出し割引や月間割引などお得な割引もあります。
まとめ
この記事では、市場拡大を続ける越境ECの現状と越境ECにチャレンジすべき理由などについて紹介しました。越境ECでは、展開先の国の文化や言葉など、独自の対応が求められることもあるでしょう。越境ECは、国内市場の限界を超えて事業を拡大する大きな可能性を秘めています。世界の越境EC市場は2030年までに約8兆USドルに達すると予測されており、特に中国を中心に急成長が見込まれています。日本企業にとっては、訪日外国人によるリピート購入需要の増加、国内消費の減少への対策、高評価を得ている「日本ブランド」の強みを活かすチャンスとなるでしょう。
ただし、越境ECを成功させるためには、消費者ニーズの把握、多言語対応によるユーザビリティの向上、スムーズな物流体制の構築など、慎重な準備と戦略が必要です。
日本郵便とそのグループ会社は、世界各国・地域の郵便事業体やパートナー企業とともに、強固なネットワークインフラを構築しています。企業の課題ごとに最適なサービスを提供します。まずはお気軽にご相談ください。
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