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自社ブランドの化粧品を開発するにあたり、自社開発には多くの障壁があります。「社内にノウハウがない」「初期費用がかかる」「販売許可が必要」などの理由から、参入に二の足を踏んでしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で化粧品OEMメーカーに依頼すれば、初期費用がかからずプロの知見を生かしたサポートが受けられます。
本記事では化粧品OEMをはじめたい方に向け、OEMメーカーを利用するメリットから選ぶ際のポイントまで網羅的に解説します。
化粧品OEMとは委託を受けて他社ブランドの製品を製造すること
OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、メーカーが依頼者のオリジナル商品を製造すること、あるいはそのメーカー企業を指す言葉です。
つまり化粧品OEMとは、コスメやスキンケア用品の開発、製造、品質管理などのノウハウを持った化粧品OEMメーカーが依頼者である販売会社のブランド商品を製造することを指します。
化粧品OEMを利用するメリット
化粧品OEMを利用するメリットは、大きく分けて以下の6つです。
- 専門的な知識や技術がなくても販売できる
- 化粧品製造販売業許可がなくても販売できる場合がある
- 小ロットから始められるため在庫過多のリスクが低い
- バルクから容器、包装まで一括で依頼できる
- 商品の企画や販促活動に集中して取り組める
- 業界の最新情報を踏まえた提案をしてもらえる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
専門的な知識や技術がなくても販売できる
化粧品OEMを利用する1つ目のメリットは、自社に専門的な技術や知識がなくても開発と販売が可能な点です。
化粧品の開発には、効果を最大限に発揮するための成分処方の技術や、科学的根拠に基づく専門的な知識が求められます。さらに高度な技術を実現できる生産設備と、専門知識を有する研究員の確保が必要です。
化粧品OEMメーカーは、これまでの開発実績により培われた専門的な技術力と知識のある人員を保有しています。製造をOEMメーカーに委託すれば、自社での設備や人員の確保が不要です。
化粧品製造販売業許可がなくても販売できる場合がある
化粧品の製造から販売までを自社でおこなう場合、「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」両方の取得が必要です。都道府県庁に申請後、審査には1〜2か月ほどの期間を要します。
申請手続きが煩雑なので、専門家に依頼する場合は5万円〜15万円ほどの手数料がかかります。有効期間は5年間で、5年ごとの更新が必要です。
また、薬剤師などの責任技術者を配置する必要があります。
化粧品OEMを利用すると、「化粧品製造業許可」「化粧品製造販売業許可」がなくても販売できる場合があります。
小ロットから始められるため在庫過多のリスクが低い
化粧品OEMを利用する3つ目のメリットは、在庫過多のリスクを減少させられる点です。
化粧品OEMメーカーの多くが小ロット生産に対応しています。自社で化粧品を生産すると、設備や人員にかかるコストを消化するためロット数を多く設定する必要があるでしょう。売れ行きの見通しが立たない商品を自社で生産するのは、余剰在庫を抱えるリスクが大きいです。
化粧品OEMメーカーに委託すれば、必要な量を小ロットから発注できるため、在庫リスクに悩まされる心配はありません。リスクを最小限に抑えるためのテストマーケティングも可能となります。
最小ロット数の目安は、以下の通りです。
【最小ロット数の目安】
製品 | 最小ロット数 |
---|---|
化粧水 | 100個~1,000個 |
美容液 | 100個〜1,000個 |
乳液 | 100個〜1,000個 |
ファンデーション(パウダー) | 1,000個〜5,000個 |
リップ | 500個〜3,000個 |
シャンプー | 500個〜1,000個 |
固形石鹸 | 100個〜300個 |
ハンドソープ | 100個〜1,000個 |
バルクから容器、包装まで一括で依頼できる
化粧品OEMを利用する4つ目のメリットは、バルク(化粧品の中身)から容器、包装まで一括で依頼できる点です。
化粧品OEMメーカーの多くが、処方開発、生産、充てんまでワンストップでおこなっています。それぞれのバルクに合った資材を自社で調達する時間と手間を省けます。
また処方と容器の工程を1社でおこなえるので、製造期間の短縮や安定した品質の維持が可能です。
商品の企画や販促活動に集中して取り組める
化粧品OEMを利用する5つ目のメリットは、本来やるべき商品の企画や販促活動に集中できることです。
生産に関わる工程を化粧品OEMメーカーに委託すれば、その分捻出できた時間を販売に向けての施策や新商品の開発にあてられます。
トレンドの移り変わりが早い化粧品業界では、いち早く市場のニーズを商品に反映させるためにも、商品企画やマーケティングに注力する時間が必要です。
業界の最新情報を踏まえた提案をしてもらえる
化粧品OEMを利用する6つ目のメリットは、業界の最新情報を踏まえた提案をしてもらえる点です。
化粧品OEMメーカーは、多数の企業から生産を請け負っているため、常に最新の成分やトレンドに関する情報を入手しています。
最新技術による原料の開発や、地球環境に配慮した新素材の開発も積極的におこなうメーカーが多いので、化粧品開発にも最新のトレンドを取り入れられるでしょう。
化粧品OEMを利用するデメリット
続いて、化粧品OEMを利用するデメリットについても詳しく見ていきましょう。主なデメリットは以下の3つです。
- 社内の技術力の育成ができない
- 依頼主が製造の状況を把握しづらい
- 仕入れコストが突然上がる可能性もある
社内の技術力の育成ができない
化粧品OEMで生産工程を全てメーカーに委託してしまうと、自社にノウハウが蓄積されず社内の技術力が育成できないデメリットがあります。
もし将来的に自社でも製品を開発する予定がある場合や、製造元との契約を解除する場合には新たに専門知識を持った人材を探す必要があります。
OEMメーカーへの委託と同時に自社の技術力を成長させるには、自社で製造する製品と委託する製品を選別するなどの対策が必要です。
依頼主が製造の状況を把握しづらい
化粧品OEMを利用すると、依頼主が生産状況を把握しづらいデメリットがあります。
自社で生産過程を詳しく把握できていなければ、消費者からクレームがあった際に即座に対応できません。また製造スケジュールの調整や管理が困難になれば、納期遅れによる販売スケジュールへの影響も懸念されます。
こうしたリスクを防ぐために、普段からOEMメーカーと密にコミュニケーションを取っておく対策が必要です。
仕入れコストの変動リスク
化粧品OEMでは、原材料の高騰により仕入れコストが上がる可能性があります。
化粧品は製造工程や仕入れルートの変更により、バルクと容器の価格に影響が出やすい傾向があります。
仕入れコストの上昇による利益率の圧迫を防ぐには、契約の締結前の段階で、価格変更がある場合の通知時期や契約書等に記載されている内容を確認しましょう。
化粧品OEMメーカーへの委託を成功させるポイント
化粧品OEMメーカーへの委託を成功させるポイントを、以下3つに分けて解説します。
- 商品企画の段階で他社との差別化を図る
- OEMメーカーと密にコミュニケーションを図る
- 販売チャネルをターゲット層に合わせて選ぶ
商品企画の段階で他社との差別化を図る
競合他社との差別化は、化粧品OEMメーカーへの委託を成功させるうえで最も重要なポイントです。
トレンドやユーザーニーズを掴みつつ、自社ブランドの独自性を打ち出せば、他社との価格競争に巻き込まれにくくなります。
商品企画のポイント
成分や原料で独自性を出す パッケージデザインにこだわる ネーミングやキャッチコピーを工夫する
対応例
原料の組み合わせや、処方で差別化を図る 他社では未使用の希少な原料を使用する コンセプトが伝わりやすいパッケージデザインや、キャッチコピーを採用する。覚えてもらいやすいネーミングも効果的
OEMメーカーと密にコミュニケーションを図る
化粧品OEMメーカーへの委託を成功させる2つ目のポイントは、メーカーと密にコミュニケーションを取ることです。
開発の段階でバルクやデザイン、開発期間、生産ロット等の重要な要素について優先事項をすり合わせておきましょう。メーカーとの密なコミュニケーションを怠ると、依頼者が意図するコンセプトやターゲット層に合わない商品ができるリスクがあります。
対応例
依頼者とOEMメーカーとで、ターゲット層と商品コンセプトについて共有しておく 配合成分やテクスチャー、デザインについても意見交換を重ねる
販売チャネルをターゲット層に合わせて選ぶ
化粧品OEMメーカーへの委託を成功させる3つ目のポイントは、ターゲット層に合わせた販売チャネルを選ぶことです。
商品を売りたいターゲット層により、購入しやすいチャネルは異なります。ターゲットに合うチャネルを選び、販売を促進しましょう。
販売チャネルの主なパターン
ドラッグストアやバラエティーストアでのセルフ販売 百貨店のカウンセリング販売
対応例
ジュニア層や男性がターゲットの化粧品は、気兼ねなく入店できるドラッグストアやバラエティーストアを選ぶ 20代〜70代までの中堅、富裕層がターゲットの場合は百貨店のカウンセリング販売が適している
化粧品OEMメーカーの選び方のポイント
化粧品OEMは、委託するメーカー選びも重要です。
あらかじめ自社が化粧品販売に求める条件をクリアしているOEMメーカーを選び、適切なコミュニケーションが取れれば、OEMで懸念される納期遅延や急なコスト上昇などにも柔軟に対応ができます。ビジネスパートナーとして長期的な信頼関係を築くためにも、OEMメーカーは慎重に選びましょう。
メーカーを選ぶ際に確認すべきポイントは、主に以下の4つです。
- 得意分野は何か
- 自社のニーズを満たせるか
- 小ロットに対応しているか
- サポート体制は充分か
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
得意分野は何か
ひとくちに化粧品OEMメーカーといっても、それぞれ得意とする分野が異なります。化粧品の分野には、主に以下の5つが挙げられます。
化粧品の主な分野(カテゴリー)
- スキンケア化粧品
- メイクアップ化粧品
- ヘアケア化粧品
- ボディーケア化粧品
- フレグランス化粧品
メーカーのホームページや事例から、得意分野を確認できます。メーカー選びの際は、自社で展開したい分野の製造実績が豊富かどうかを確認しましょう。
自社のニーズを満たせるか
化粧品OEMメーカーによって、強みとする技術や可能な作業範囲がそれぞれ異なります。自社のニーズに照らし合わせ、以下の点に注目しながらメーカーを選ぶとよいでしょう。
注目ポイント
- 製造に必要な原料を保有しているか
- 独自開発の処方が可能かどうか
- 環境に配慮するなど特殊な包装資材の調達は可能か
- オーガニックやヴィーガンコスメなどの認証を要する製品の開発実績があるか
- 海外の品質基準に準拠した製品の開発実績があるか
小ロットに対応しているか
対応できる最小ロット数は数百〜5,000というように、各化粧品OEMメーカーによって差があります。
初めて開発する商品については、売れ行きを確認しつつ追加生産できる体制を作ることで余剰在庫を極力減らせます。
またEC販売が中心の企業など、多くの品種を少量ずつ販売したい場合も小ロット対応が可能かどうかはメーカー選びの大きなポイントとなるでしょう。
サポート体制は充分か
化粧品OEMメーカーによって、サポート可能な範囲は異なります。サポート内容の一例は、以下の通りです。
主なサポート内容
- マーケティングを含めたコンサルティングまで対応してくれる
- 関連法規をふまえた表示の監修をしてくれる
- モニターによる評価試験を実施してくれる
実績が豊富な化粧品OEMメーカーであれば、製品の開発だけでなく販売に関するノウハウもあります。効果的なマーケティング戦略までサポートできるメーカーもありますので、確認してみましょう。
化粧品の販売には、薬機法や景品表示法、特定商取引法、食品衛生法などさまざまな法規制が関わります。パッケージやラベル表示で法令をクリアできているかどうかは、経験豊富なOEMメーカーに任せると確実です。
化粧品の試作品ができた段階で、ターゲット層にモニター試験を実施するのが評価試験です。製品化において必須ではありませんが、より売れやすい商品開発のために有効です。
サポート内容とともに、費用面で自社の予算に合うかどうかも確認しましょう。
化粧品OEMに関するよくある質問
化粧品OEMに関するよくある質問について、以下に詳しく解説します。
依頼する費用はどのくらいかかる?
化粧水や美容液などのスキンケア化粧品を一例に挙げ、費用の相場を見てみましょう。
一般的に、生産ロット数が多いほど1個あたりの製造にかかる費用が安くなります。使用する原料や処方、容器、デザインによって追加費用がかかり、コストが変動します。以下の表はあくまでも目安としてご参照ください。
【化粧水や美容液、クリームなどの費用(目安)】
ロット数 | 費用の目安(円/個) |
100個〜 | 900〜2,000 |
500個〜 | 800〜1,000 |
1,000個〜 | 600〜800 |
化粧品OEMで売れない原因は?
化粧品OEMが売れない場合、主に以下のような原因が考えられます。
化粧品OEMで失敗する主な原因
- 他社商品との差別化ができていない
- 商品がターゲット層に合っていない
- トレンドをふまえていない
- 自社製品とOEMメーカーの得意分野がミスマッチ
対策として、商品開発の前に競合商品のリサーチを十分におこない、自社の強みと独自性洗い出しましょう。あわせて試作品ができた時点でモニターによる評価試験をおこなえば、ターゲット層に合わない商品を製造するリスクが大幅に減少します。
基礎化粧品の成分やコスメのカラー、価格帯にも、その年によってトレンドがあります。たとえば、2024年のトレンド予測では高くても効果のあるエイジングケアが注目されています。リップやアイシャドウのメイクアップ化粧品にもスキンケア効果を加えるなど、トレンドをふまえた商品開発が売れる商品を作る秘訣です。
その他、自社が開発したい分野の製造実績が豊富なOEMメーカーを選べば、トレンドをふまえた新商品の開発や新しい処方にも柔軟に対処してもらえます。細かいニーズに対応してもらえるよう、メーカー選定の際はメーカーが得意とする分野にも注意しましょう。
まとめ
化粧品OEMでは、メーカーにより得意分野がそれぞれ異なります。化粧品OEMを成功させるには、自社の分野やニーズにあうメーカー選びが重要です。
また販売においては、ターゲット層に合わせた販売チャネルの選択が求められます。ドラッグストアや百貨店など実店舗での販売チャネルに加え、コロナ禍を経てニーズが高まりつつあるのがECサイトでの化粧品販売です。EC戦略を成功させるには、物流面の整備が必須です。
日本郵便では、全国を網羅する郵便・物流ネットワークを生かしたワンストップ物流サービスを展開しております。日本郵便が保有する営業倉庫等では、注文前の商品の保管や注文があった商品の発送の代行はもちろんのこと、化粧品サンプルの同梱作業や、ギフトラッピングなど、きめ細やかな対応が可能です。
今後、化粧品をECサイトで販売する予定のある企業様は、ぜひ一度ご相談ください。