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ECサイトの返品は売上低減や作業コストが増大することから極力避けたいものですが、「事前に商品を確認できない」方式である以上、返品はゼロにすることはできません。しかし、対策次第で返品率の低減は可能です。
そこで今回は、返品が発生する理由とその対策方法を紹介します。また、リピートに繋がる返品対応についても触れているので、返品対応に課題を抱えている企業の方はぜひ参考にしてください。
ECサイトで返品の多い分野は?
実店舗よりも返品率が高い傾向にあるECサイトですが、そのなかでも下記の分野は特に返品率が高くなる傾向にあります。
- アパレル
- アクセサリー
- インテリアグッズ
- アンダーウェア
- 靴
具体的な理由については後述しますが、上記の分野に多いのがECサイトに掲載されていた写真などの情報から想像する商品と、実際に届いた商品のイメージに差異が生じやすいということです。原因は言うまでもなく「実物を見て買えない」ECサイトの販売形態にあります。
返品対応が売上に与えるダメージは大きいため、企業にとってはできるだけ返品対応は避けたいのが実情です。そこで最近では自宅で試着・お試しができるサービスや、オンラインからオフラインに誘導するO2O(オーツーオー)施策など、事前に試せる試みを実施している企業が増えています。
ECサイトで返品が発生する理由
ECサイトで返品が発生する理由は、大きく下記の3つに大別できます。
- 消費者都合によるもの
- 販売者都合によるもの
- 配送業者都合によるもの
返品の原因によって、サプライチェーンのどこに課題があるのかが分かります。そのため、返品対応をただの業務として処理するのではなく、原因を把握したうえで課題解決の糸口として利用するようにしましょう。
消費者都合によるもの
消費者都合によるものとは、具体的に次のようなケースです。
- 購入前のイメージ通りではなかった
- サイズが合わなかった
- 注文を間違えていた
消費者都合の返品は、「実物を見て買えない」「購入前に試せない」ことが原因で起こります。実店舗であれば試着したり、実際に試したりして自分に合うかどうかを検討できます。しかし、ECサイトでは事前に試せないため、過去の買い物経験を頼りに勘で購入することになります。また、単純に注文する商品やサイズ、カラーを間違えたというケースもあるでしょう。
消費者都合の返品に関しては、返品に応じるのか否かをあらかじめ決めておく必要があります。担当者ごとに対応が違うとクレームに繋がる可能性があるため、ルールを決めたら社内に周知徹底しましょう。さらにECサイトにも同様の内容を記載しておくことで、返品依頼や返品に関するクレームを低減できます。
販売者都合によるもの
販売者都合による返品とは、具体的に次のようなケースを言います。
- 発送した商品に間違いがあった
- 不良品や破損した商品を送っていた
- 注文していない商品が紛れ込んでいた
これらが原因の返品が発生する背景には、注文の受付ミスやシステムトラブル、製造工程におけるミス、配送業者との連携ミスなどが考えられます。
販売者都合による返品は消費者側には一切非がないのに、返品にかかる手間を押し付けることになるため、企業の信頼低下は免れません。そのため、販売者都合による返品が発生しないよう、各工程でのミス防止に努める必要があります。万が一、販売者都合による返品対応が発生した場合には信頼低下を最小限に留められるよう、丁寧に謝罪したうえで速やかに返品・交換対応を行いましょう。
配送業者都合によるもの
配送業者の落ち度により返品対応が発生するケースもあります。具体的には次のようなケースです。
- 配送中に商品を破損させてしまった
- 配送先を間違えた
たとえば適切なパッケージがされていなかったり、荷物を乱暴に扱ったりするなど、配送業者の荷物の取り扱い方によっては商品が破損することがあります。また、保管倉庫内での落下や配送中の事故により商品が破損することもあるでしょう。ほかにも悪天候により商品が濡れたり、風で飛ばされて破損したりといったことも起こりえます。
さらに運転手の勘違いにより配送先を間違えたことで、返品に繋がるケースもありえます。これらのケースにおいても販売者であるEC事業者はただちに返品対応に応じる必要があります。しかし、責任の所在は配送業者との契約内容や交渉によって決まるため、万が一の場合にもめないよう、事前にある程度の擦り合わせをしておきましょう。
ECサイトの返品率を下げるための対策
ECサイト運営で、できるだけ返品率を下げるためには次のような対策を行いましょう。
- 商品写真の見直し
- サイズ表記の見直し
- 物流業務の見直し
返品率ゼロが理想的ですが、EC事業には少なくとも消費者と配送業者が関与しているため、販売業者の努力だけではどうにもできない事案が発生します。そのため、返品率ゼロは実現不可能ですが、販売業者都合の返品率を低減することで総合的な返品率の低下は実現できるでしょう。
商品写真の見直し
商品写真を極力実物に近づけ、細部の写真も含めて商品画像を充実させることで、「実物を見て買えない」ことが原因で起きる返品を減らせます。写真を用意する際に意識したいのは情報量です。たとえばアパレルであれば、下記のような情報がわかる写真を用意します。
- 素材感
- 縫製の仕上がり具合
- 裏地の有無
- 色味
- 袖、裾など細部がわかる写真(※1)
- スタッフの着用写真(※2)
- 購入層に合ったモデルの起用
- 商材写真のモデルの身長・3サイズの表記
ECサイトでは写真が唯一、商品を確認できる手段です。写真が少なく細部まで確認できずに購入した場合、実際に商品見たときに「思っていたのと違う」というミスマッチが起きやすくなります。返品対応の可能性を高めてしまうため、消費者が知りたいと思うであろう商品の情報が載った写真を漏れなく掲載するようにしましょう。
サイズ表記の見直し
現行のサイズがS、M、Lなどの抽象的な表記になっている場合は、奥行・幅・高さのサイズを測り、具体的な表記に直しましょう。具体的には下記のようなサイズの表記方法が有効です。
- 奥行・幅・高さの具体的な寸法(付属品含む)
- 家具などの場合は搬入経路に必要な幅や高さなど
- 収納ボックスなどの場合は、外径と内径を記載する
- レビューの実装(※3)
- サイズチェックの導入(※4)
海外製のアパレルを扱う場合は、同じS、M、Lでも国によってサイズがまったく異なるので具体的な寸法の明記が必要です。また、「日本の洋服に比べて小さめに作られています」などの文言を記載しておくとサイズ選択のヒントになるため、返品率を下げる助けになるでしょう。
消費者のなかには「写真で見た感じ大丈夫そうだったから」という理由で、サイズを確認せずに購入するケースも考えられます。こうしたケースでは高確率で返品対応になるため、目に付きやすい場所にサイズを表記するようにして、確認のうえ購入するよう促しましょう。
物流業務の見直し
物流業務・配送中のミスによっても返品対応は起こりえます。そのため、物流業務の見直しも必要です。特に下記のような点を重点的に確認しましょう。
- 梱包資材・梱包方法は適切か
- ピッキングミスを予防する仕組みの構築
- 誤出荷を予防する仕組みの構築
- 商品の管理方法は適切か
- 人手は足りているか
流通量が多く、自社で物流業務を行っている場合は人手不足によるミスが起きている可能性があります。その場合は、ミスを防止する仕組み作りや物流業務のアウトソース化が有効です。すでに物流業務をアウトソーシングしている場合は、アウトソース先を見直すことでミスによる返品率の低減が期待できます。
日本郵便ではEC事業者の物流業務を支援するソリューションを提供しています。全国を網羅する郵便・物流ネットワークとお客さまの物流課題に寄り添い改善してきたノウハウを活かして、配送の前工程である商品の保管、ピッキング、流通加工等の物流業務の最適化を図ります。
課題別に最適なソリューションを提案していますので、人手が足りない、ピッキングや出荷ミスが多いなど、物流業務に課題を抱えている場合はぜひお気軽にご相談ください。
ECサイト返品ポリシーの重要性
返品ポリシーとは、期限や送料負担の有無など、返品・交換に関する条件を企業側が定めたルールです。返品・交換対応が発生した際にはこのルールに則って対応します。トラブル防止のためにも返品ポリシーは、消費者にも分かりやすい場所への記載が必須です。
返品・交換に対するハードルが高いと購入にすら結びつかなくなるので、返品ポリシーは厳しくしすぎないことが大切です。
返品対応が良ければリピートにつながる
事前に商品の実物を確認できないECサイトでは、消費者側のリスクが大きくなります。しかし、返品が容易になれば、消費者側のリスクを減らせます。「このショップであれば、もし失敗しても返品すれば良い」という安心感を提示することで、長期的な関係性の構築が可能になります。
返品や試着ができるネットショップが増えている
「商品を試せない」ことはECサイトの最大の欠点とも言えます。この欠点により、消費者は購入に慎重な姿勢を取らざるをえません。販売機会すら失ってしまうこの欠点を打破するために、最近では返品や試着ができる施策を展開するネットショップが増えています。たとえば次のような施策です。
- ネットショップで気になった洋服を近くの店舗で取り置きして試着できる
- ○日間の無料トライアル期間がある
- 自宅で試着して、気に入った商品のみ購入し、残りは返品できる
- 出荷から○日以内であれば、返品できる
このようにオンラインとオフラインを融合し、「気軽に試せる」環境を整えることで購入率の向上および返品率の低減が期待できます。
ECサイトの返品対応の流れ・ポイント
ECサイトの返品の流れとしては、まずECサイトの問い合わせページやカスタマーセンターなどに、消費者から返品希望の連絡が入ります。返品希望を受け付けたら、返品を受け入れるための手続きを行い、購入者に商品の返送を依頼します。
消費者から商品が返送されてきたら、返金・交換の要不要を判断して対応します。なお、返品対応の際には次の点に注意しておきましょう。
- 返品受付の段階でスタッフによる対応の差がでないようにする
- 返品受付をスムーズにできるようにコールセンターやメールベース、チャットボットの実装も検討する
- 商品が発送されたら、到着予定日や追跡番号を知らせてもらう
- 返品ポリシーに則り、商品の状態をチェックして返品・交換の対応を決める
- 販売事業者・物流業者側の不備による返品の場合は速やかにお詫びする
あわせてスムーズな返品・交換対応ができるように物流体制を整えることも重要です。返品対応に時間がかかると消費者の不満を増大させてしまいます。逆にスムーズに対応できればリピーターの獲得に繋がる可能性があるため、物流体制を整備して迅速・丁寧に返品対応ができるようにしておきましょう。
ECサイトの物流業務/コールセンター業務/返品ソリューションは日本郵便にご相談ください
JP(日本郵便)では、EC事業者の物流業務を支援する「物流ソリューション」を提供しています。
具体的には弊社が提供するクラウドシステムの導入により、ピッキングや検品、丁合作業のミス低減を可能にします。返品処理機能もあるため、倉庫への事前連絡・再出荷指示も可能。返品・交換処理をスムーズに行えます。
さらに全国にある郵便局や物流ソリューションセンターの活用により、物流拠点を分散することでリードタイムの短縮はもちろん、配送距離が短くなることで配送中の汚破損の低減も見込めます。交換対応においても迅速に対処できるため、リピーター獲得のチャンスを逃しません。
創業以来、物流課題に寄り添い改善を図ることで培ってきたノウハウを活用し、商品の保管、ピッキング、流通加工をはじめ、業務効率を高める物流システムの設計・構築まで対応可能。物流業者都合の返品対応が多い、返品対応の業務負荷が高いなど、物流課題にあわせて最適なソリューションを提案いたしますので、物流面でお悩みの企業の方はぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
返品対応は、売上はもちろん、従業員の作業負荷にも大きく関係してくるため、できるだけなくしていきたいところです。
しかし、返品は悪い面だけではありません。「返品=課題発見のツール」と考えれば、返品は顧客からのありがたいフィードバックとなります。このフィードバックにより判明した課題を地道に解決していけば、自ずと返品率も下がっていくはずです。そのため、返品をただの業務として処理するのではなく、企業イメージと信頼を高めるチャンスと捉えて返品対応に取り組んでいきましょう。