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ECサイトでのネットショッピングが一般化した現代では、野菜などの農作物をECサイトで販売する農家も増えています。これまでは卸売が一般的だった農業において、ネット販売は「中間マージンの低減」や「販路拡大」など、さまざまなメリットが考えられます。
今回は農家がECサイトを活用して農作物を販売するメリット・デメリットを中心に紹介します。
農家が農作物のECサイト販売を行うメリット

農家が農作物のECサイト販売を行うことには、次のようなメリットが見込めます。
- 中間マージンがなく利益率を上げられる
- 販売価格や商品構成の自由度が高い
- 規格外の野菜などを販売することで、フードロスの削減につながる
- 消費者の反応を直に感じることができる
- 全国にファン・リピーターを獲得できる
- 鮮度の高い農作物のお届けが可能
主なメリットは利益率の向上と販路拡大が見込める点です。利用するECサイトの種類にもよりますが、消費者の声を直接聞く機会を期待できることも農家にとって大きなメリットとなるでしょう。
中間マージンがなく利益率を上げられる
収穫した農作物を売る代表的な方法に協同組合や農産物直売所、スーパーなどへの委託販売があります。委託販売の場合、中間業者に手数料等を支払う必要があるため、農家の利益率は下がります。一方でECサイトを開設して直接販売を行えば、中間業者に手数料を支払う必要がなくなる分、利益率向上が見込めるでしょう。ただ、利用するECサイトによっては手数料や出品に伴う経費が発生する場合がありますので注意が必要です。
販売価格や商品構成の自由度が高い
ECサイトで直接販売する場合、価格設定はもちろん、消費者のニーズに合わせてにんじん・たまねぎ・じゃがいもをカレーセットと称して販売することも可能です。価格や商品構成を自由に設定できるため、ブランディングもしやすいメリットがあります。
規格外の野菜などを販売することで、フードロスの削減につながる
近年では規格外の農作物を販売しているスーパーや道の駅なども見かけますが、売り場の端の一角に少量設置されていることがほとんどです。受入れ先が少ないため、規格外商品の多くは出荷されず廃棄となるのが一般的です。
しかし、ECサイトで自ら販売すれば、数量も種類も限定することなく規格外商品を販売できます。規格商品と比べると安価での提供になることが考えられますが、消費者のなかには形ではなく価格等を重視する層もいます。需要と供給がマッチすればフードロスを減らせるだけでなく、処分にかかるコストの低減にも繋がるため、売上の向上が期待できます。
消費者の反応を直に感じることができる
中間業者を介して販売する場合、生産者である農家には消費者の声はなかなか届きません。しかし、ECサイトでは直接やり取りができるため、消費者の生の声を知ることができます。
ただし、消費者の反応のなかには嬉しい声もあれば、反省する点が多い声もあるでしょう。消費者の声は商品や配送方法などを含めたサービスのフィードバックです。一喜一憂するためのものではなく、サービス改善のヒントとして活かしていけば、競合他社との差別化も図りやすくなります。
全国にファン・リピーターを獲得できる
農作物の販売方法は大きく分けて下記の3つです。
- 委託販売:協同組合や農産物直売所、スーパーなどに手数料を払い、販売を委託する方法
- 買取販売:飲食店や加工業者などに買い取ってもらう方法
- 直接販売:農場に直接販売所を設けたり、ECサイトを開設したりして販売する方法
上記のうち、ECサイトでの販売のみが商圏に捕らわれずに多くのお客様に農作物を届けられます。認知度が上がり、ブランディングがうまくいけば、商圏を限定せずに全国にファン・リピーターを獲得できます。
全国宛て農作物の発送には、離島料金の設定もない日本郵便のゆうパックがおすすめです。
鮮度の高い農作物のお届けが可能
委託販売などの一般的な流通方法では、農作物を収穫したら出荷団体や卸売市場、小売業者を経て消費者の手に渡ります。輸送に際して鮮度を保持するための工夫はされていますが、中間業者の数が多ければ多いほど、流通には時間がかかり、農作物の鮮度が落ちるのは避けられないでしょう。
一方、ECサイトでは直接消費者に農作物を届けられるため、流通のリードタイムが短く、鮮度の高い状態を保てます。また、流通リードタイムが短いことから、例えば「葉物野菜は夕方に収穫する方がよい」など、農作物ごとの最適な時間帯に収穫も可能です。スーパーなどの委託販売所で購入するよりも鮮度はもちろん、味もおいしい農作物を消費者に楽しんでもらえます。
農家が農作物のECサイト販売を行うデメリット

メリットが多いことから農家がECサイト販売を始めることはおすすめですが、下記のようなデメリットがあることも留意しておかなければいけません。
- ECサイトの管理や発送など農作業以外の負担が大きい
- 在庫管理を徹底しないと農作物を腐らせるリスクがある
- 競合となる農家が多いため「売り」がないと埋もれやすい
ECサイトの管理や発送など農作業以外の負担が大きい
ECサイトの運営には下記のようなさまざまな作業が付帯するため、農作業以外の負担が重くなります。
- サイト制作・管理
- 受注管理
- 梱包・発送
- 問い合わせ対応
- 集客(広告配信・SNS運用・SEO対策など)
リソースに余裕があるなど、作業に集中できる環境が整っている場合は自己完結も可能です。しかし、リソースが少なく、農作業もECサイト運営も中途半端になるようであれば、ECサイト運営や梱包・発送等を外部に委託することも検討しましょう。ただし、委託にかかるコストが収益を圧迫するようでは本末転倒です。そのため、費用をかけてでも利益率を維持できるかどうかの試算は欠かせません。
梱包・発送等の外部委託に関して、日本郵便の物流ソリューションでは通年のご利用だけでなく、短期間や一部作業の「スモールロジ」にも対応しています。
在庫管理を徹底しないと農作物を腐らせるリスクがある
農作物は気候などの生育条件によって収穫量が左右されます。注文が少ないのに大量の収穫があったり、反対に注文が殺到して収穫量が足りなかったりという事態も往々にして起こりえます。そのため、いつ・どのくらいの量が必要になるのかの予測と、それに対する徹底的な在庫管理の実施が求められます。
競合となる農家が多いため「売り」がないと埋もれやすい
株式会社矢野経済研究所が2022年に実施した調査によると、2022年の国内の産直ビジネス市場は3兆3,177億円です。2018年の2兆8,247億円からその規模は順調に拡大しています。これには農産物直売所や産直宅配などの数字も含まれるため、ECサイト販売を行っている農家の数を推し量ることはできませんが、近年のオンラインマルシェの活況を見るに、農家のEC化率は増えていると考えられます。
競合となる農家が多いため、差別化できるポイントがないと埋もれやすく売上に繋げられません。特にECモールでは価格競争が起きやすく、売れているけど利益率が低いということもよくあります。価格競争から一線を置きつつも、お客さまに選ばれるためには、商品およびサービスの差別化が欠かせないポイントとなります。

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農家がECサイト運営を行う際の成功ポイント

農家がECサイト運営を行う際には、下記のポイントを抑えておく必要があります。
- SNSやSEOなど集客方法を決めておく
- 発送業務など本業以外の作業は外部委託する
どの種類のECサイトを選ぶとしても自分たちでも集客する必要はあります。ただし、本業である農業を疎かにはできないので、限られたリソースでECサイト販売を成功させるためには、発送業務など、本業以外のサブ作業の外部委託の検討も必要です。
SNSやSEOなど集客方法を決めておく
ECサイトはサイトをオープンしただけで売上が立つほど甘くありません。それはどのECサイトであっても言えることです。モール型ECなどはモールの知名度があるため、ある程度の集客は見込めますが、農作物のEC販売を成功させるためには自社での集客も欠かせない要素です。代表的なものとしては、次のような集客方法があります。
集客方法 | メリット | デメリット |
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SNS運用 |
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広告配信 |
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EO対策 |
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理想はこれらすべての対策を行うことですが、農業の片手間ですべてを対応するのは現実的ではありません。あれこれ手を出してしまうと中途半端に終わってしまうため、まずはいずれか一つに絞って集客を行うのがおすすめです。特にSNSは気軽にアカウントを開設・運用できることから、抑えておきたい集客方法です。
発送業務など本業以外の作業は委託する
新たなことをはじめると、それに伴い慣れない作業が増えます。特に慣れないうちはミスが出やすくなります。これからお客様の信頼を得ようというときにミスが重なってしまえば、信頼を得るどころか二度と利用してもらえなくなるでしょう。そうした損をしないよう、本業以外の作業のアウトソーシング化も視野に入れておく必要があります。
たとえば小口取引が多い場合は個別梱包の数が多くなり、発送業務の負担が大きくなります。これにより本業に支障をきたしてしまうのは本末転倒です。そのため、本業に集中するためにもこうした場合は、一部でも作業を外部委託することを検討しましょう。

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まとめ
収穫量の不確実さや生鮮食品である点から農業とECサイトは一見相性の悪いものに見えますが、国内の産直ビジネス市場は拡大しています。参入する競合も多いため、メリット・デメリットがあることを認識した上で、本業におけるブランド力も同時に磨かなければいけません。
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